即決和解手続き
即決和解(訴え提起前和解・起訴前和解)とは民法上の紛争について、
簡易裁判所に和解の申立をし、裁判所で和解内容を和解調書(確定
判決と同様の効力を有する)に記載してする簡易迅速に債務名義を取
得できる法的手続です。
債務名義とは
強制執行によって実現されることが予定される請求権の
存在,範囲,債権者,債務者を表示した文書のことで、強制執行申立て
る際に強制執行ができることの根拠を表したものです。
申し立てる管轄の裁判所
相手方の所在地を管轄する簡易裁判所(民事訴訟法275条)
又は相手方と合意した管轄の簡易裁判所
(民事訴訟法第11条
当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所
を定めることができる。)
申立に必要な条件(要件)民法695条
1、
当事者間に争いがあること
2、
当事者が互いに譲歩すること
3、 争いを解決する合意をすること
手続きの流れ
和解をする相手方の所在地の管轄の簡易裁判所に申し立て、裁判所
は期日を指定して、当事者を呼び出し、双方が出頭したところで和解
調書を作成する。
この和解調書は債務名義となる。
債務名義とは「債権が確かに存在することを公に証明した書面」のこ
とです。
メリット
1 簡易迅速に低廉費用で債務名義である和解調書を取得することが
出来る。
訴訟手続きにより債務名義(判決等)を取得しようとすると時間と費用
がかかることになるが、即決和解であれば裁判所に1回出頭するだけ
でよい
2 強制執行認諾条項付の公正証書や仮執行宣言付支払督促も「通常
訴訟手続き」を経ずに迅速に強制執行の申立ができるが、公正証書
や支払督促
は一定の金銭、代替物、有価証券の給付を目的とする
権利に限定される。
即決和解の場合は、金銭等の給付以外(建物明け渡し等)の強制執
行の債務名義としても認められる
デメリット
当事者であらかじめ合意が出来ていないと和解は成立しない。
相手方の協力が不可欠です。
相手方と争っている場合は手続きできません。
公正証書を作成する手続きに比較すると期日の指定、裁判所への出頭
等〔裁判所は管轄の定めがあり、相手方の所在地の管轄エリア内に1つ
しか所在しないが、公証人役場は管轄も無く、裁判所の管轄エリア内に
は複数公証人役場が所在し、公正証書作成に比較すると利便性が低い〕
和解が整わない場合
和解の合意が整わず、期日に双方が申し立てた場合には訴訟に移行する
ことになります。(民事訴訟法275条2項)
即決和解の申立てが出来ない場合
訴訟手続きよりも迅速簡易に取得ができますが、相手方との合意がない
と手続きできませんので、相手方が協力してくれない場合や行方不明の
場合には手続きできません。
そして、即決和解(訴え提起前和解)は民事上の争いが無い場合には申立
てることは
はできません。
紛争が無く、単に相手方との将来の約束を和解調書にしたいと言う理由だ
けでは、申立ての前提要件を欠いていることになります。
即決和解と公正証書の比較
即決和解手続と公正証書の手続費用、管轄、債務名義の内容についての
比較を一覧表にして解説しています。
「即決和解手続と公正証書比較一覧表
」をご覧下さい。